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「こども芸術大学」見学記 [活動いろいろ]

entrance.JPGoutside.JPG2/12(土)、「アートからみるこどもの関わり方~おしゃべりバスツアー~」(主催:中之島4117)というイベントに参加、京都造形芸術大学内にあるこども芸術大学を見学してきました。これは、同大学が運営する、3~5歳の子ども(とその親)を対象とした幼児教育施設。芸術大学と銘打っていますが、いわゆる芸術の英才教育の場ではなく、「感じる力」「工夫する力」「伝える力」という人間としての基礎力を育むことを目標としています。

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大学所属の研究所の実践機関という位置づけで、文科省や厚労省が認可する幼稚園や保育所とは異なりますが、それらに並ぶ教育施設として構想されています。教師や保育士が指導するスタイルではなく、保護者のコミットメントを最大限に活用する運営方式を取り、スタッフは教諭免許や保育士資格を持つ人に限定されず、いろいろな経歴を持つ人が在籍しています。活動内容も、固定的な年間カリキュラムのようなものはなく、スタッフと保護者が話し合いながら決めていくとのこと。学校のすぐ裏が里山のようになっており、自然に恵まれ、子どもが1日を過ごすには申し分ない環境。1年間の活動費(基本)は、親子2人分で30万円だそうです。

最大の特徴は、基本的に親子が一緒に通う(=活動する)ということ。子どもが安心して育つ環境ということを考えたとき、幼少期における母子とのきずなは特に大事であるという観点から、年少の時は毎日親子一緒に登校することになっています。年中・年長になると、週1~2回の共同アクティビティやミーティング以外は、親の登校日は自主選択で決めるようですが、親とスタッフが一緒になって子どもを見守るというスタンスは変わりません。これによって、子どもの成長もさることながら、親の変化・成長が著しいのだそうです。第三者(子ども芸大スタッフ)も介在しつつ、子どもと真剣に関わる3年間は、親の意識や行動を大きく変えるのでしょう。

見学当日は週末で実際の活動風景を見たわけではなく、施設見学とスタッフの方との意見交換が中心だったので、あまりリアルな感想を持つには至らなかったのですが、スタッフの方々のお話を聞いた限りでは、趣旨や教育内容は納得できるものでした。ただ、現代の情勢を考えたとき、こども芸術大学の趣旨を理解した上で、それでもなお(特に普及という点で)ネックだなと感じたのが、最大の特徴でもある「親子一緒に通う」(年少の場合)ということ。毎日、送迎を含め平日の昼間をずっと子どもと過ごすとなると、専業主婦(夫)が前提になります。ここに通っている親子の家庭の平均的経済水準は分かかりませんが、推察するにある程度ゆとりのある家庭でしょう。同伴者は多くの場合母親でしょうが、経済状況が厳しくなっている今日、フルタイムであれパートであれ勤めに出る母親は今後増えていくでしょうから、3歳児であっても、毎日子どもと一緒に過ごすことのできる母親は限られているのではないでしょうか。

一方で、延長保育へのニーズなど今日の幼児教育・保育に関する議論や施策は、どちらかといえば大人の事情からの要請で動いており、必ずしも子どもにとってベストな生育環境は何かという観点に立つものとは言えないので、そうした趨勢に一石投じるという点では、親子という単位をコアとした幼児教育、幼児期の成長サポートのあり方は注目に値すると思います。

いずれにせよ、これだけ親のコミットを前提とする教育が普及していくには、個々の親の意識や経済状態の問題だけでなく、社会全体が幼児期を本当に大切なものと捉え、その時期の子どもをどう育んでいくのかについて議論を深め、大人の働き方や労働環境の面も含め、親と子を包括的に支援するような制度整備や意識改革をめざす必要があります。そうでなければ、ラグジュアリーな教育プログラムの選択肢の一つになってしまうかもしれません。

大学の付属機関ゆえ、いろいろと恵まれていることは確かでしょう。同様の活動を一民間団体が実践しようとすれば、設備にせよ受益者負担額にせよ同じようにはいきません。現時点では、あくまで大学という研究機関を基盤とした社会実験といえるでしょう。幼児教育のプラットフォームになるには現実的課題も多そうですが、理念や活動自体は興味深いですし、共鳴する点も多いので、今後も注視していきたいと思います。

小村みち
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