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西洋風景画のあゆみ [講師出講]

去る3月23日、シニアCITYカレッジ(主催:NPO法人シニア自然大学校)で美術の見方・楽しみ方についてのレクチャーをしました。受講者はシニアエイジの方々50名強。今年で3年目になりますが、毎回きわめてモチベーションの高い皆さんからパワーをいただき、4時間の長丁場も苦になりません。一昨年の歴史画・宗教画、昨年の人体表現(裸体画)に続き、今回は西洋絵画の中でも特に多くの人々に親しまれている「風景画」に光を当てました。

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雪舟(15世紀 日本)

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アルトドルファー(16世紀 ドイツ)

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クロード・ロラン(17世紀 フランス/イタリア)

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ホッベマ(17世紀 オランダ)

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C.D.フリードリヒ(19世紀初頭 ドイツ)

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モネ(19世紀後半 フランス)


古来より山水画を愛でてきた東洋に比べ、西洋の風景画の歴史はかなり新しいのですが、近代絵画に欠かすことのできない重要なジャンルになりました。その成立の過程には様々な紆余曲折があり、芸術論争があり、芸術的実験がありました。たいてい金地一色の背景だった中世のイコン、やがて背景に自然や街が描きこまれるようになり、さらに主題より風景描写そのものに比重のある英雄的風景画の登場、そして独立した風景画の成立―風景画をめぐる数百年の軌跡は、西洋の芸術観・自然観の軌跡をたどるようでもあります。中でも自然の猛威の前になすすべのない人間というロマン主義的自然観は、東日本大震災の直後という時節柄、タイムリーであると同時に、複雑な気持ちを喚起するものでした。

自然は決して一面的には捉えられない。ある時は大きな恵みを、ある時は大きな破壊をもたらし、どちらか一方の顔だけで私たちと付き合ってはくれません。自然と人間の関係も、一筋縄ではいかない。感謝と畏れ、共存と闘いの二極をゆらぎながら、私たちはここまできたのだと思います。どんなに技術が進歩しても、本質的にそれは変わらないでしょう。

どこまでも“便利”が追求されていく現代。このまま行けば人はますます生の自然から離れていくであろうゆえに、本格的な工業化時代の入り口にロマン主義者たちが抱いた、畏怖に満ちた自然観を思い起こすことは、アクチュアルな意味をもつように思えてなりません。

小村みち
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