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子どもと震災―絵に表れるショック体験と退行現象 [子どもの絵について]

子どもが受けた被害の記憶は、言葉で語られることなく心の奥に潜り込み、子どもを無気力にします。私は阪神淡路大震災の直後、臨床心理士の方々とともに避難所の学校に赴き、子どもたちにクレヨンと画用紙で絵遊びの機会を提供しました。

エネルギーのある子は校庭で遊んでいましたが、親の傍でうずくまっている子も多く、そうした子どもたちに画用紙を見せると、近寄ってきて、ぽつぽつしゃべりながら描き始めました。彼らの絵には燃える家、走る救急車、血、ウンチ、哺乳瓶など、まさにあの場あの時の経験や退行(赤ちゃん返り)への欲求が鮮明に表れていました。

ある子どもは、非常な興奮状態で数枚の絵を一気に描き上げ、1時間も語り続けたあと平静を取り戻し、親のところへ帰っていきました。「怖さを吐き出す」という言葉がぴったりの光景で、絵の中に怖さを塗り込め、無意識に早く忘れようとしているかのようでした。

あまりに大きなショックを体験した子どもは、一時的に退行の様相を見せることがあります。おねしょをしたり、親の傍から離れられなくなったり、幼児のなぐりがきに逆戻りしたり…。絵にはそうしたサインがよく表れます。被災した子どもの絵にウンチやおっぱいが表れたり、絵が年齢丌相応に下手になっても、周囲の大人は過度に心配せず、ショックや恐怖心を共有するような接し方を心がけてみてください。

理事長 小村チエ子

※上記は、ニューズレターArt for Life Vol.41にも掲載しています。
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