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マリア×マリアその1―聖母マリア [美術講座]

歴史に名を残している画家の大半は男性ですが、絵の中には夥しい数の女性が登場します。描く女、描かれる女―現代では女性アーティストもめずらしくありませんが、人類の歴史を通じて女は圧倒的に「描かれる」側の存在でした。そんな「描かれた女性たち」に光を当ててみようと、今年度前半の美術講座は<絵の中の女性>をテーマに5回シリーズで開講中です。

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左上:レオナルド・ダ・ヴィンチ《聖アンナと聖母子》
右上:ムリーリョ《無原罪の御宿り》
下:フラ・アンジェリコ《受胎告知》

5月16日の第1講で登壇してもらったのは、「描かれる女性」の筆頭格、聖母マリア。乙女であり、母であり、今なお世界各地で目撃譚が絶えることのない永遠のマドンナ。その名を冠した聖堂や教会の多さを見ても人気のほどが伺われ、実質的にはキリストを凌ぐスーパースターです。聖なる乙女にして聖なる母マリアは、人が女性の中に見たいと願う様々な理想を投影されてきた存在です。

そんなトップスターのマリアですが、聖書(正典)には驚くほど少ししか記述がありません。キリスト教は西洋美術の根幹で、多くの主題のキリスト教の聖典に基づいていますが、いわゆる『聖書』(正典)を読んでも、どこにも出てこないエピソードはけっこう多いです。というのも、聖書には正典(Canon)と外典(Apocrypha)がありますが、絵画の主題は外典由来のものも多いからです。聖母もその一人で、マリア伝説の主たる源泉は『ヤコブ原福音書』という外典。この書の眼目は、一言でいえば、マリアの処女性の強調です。(正典には登場しない)ヨアキムとアンナというマリアの両親も登場し、(イエスと同様)奇跡的な受胎によって生を受けた生誕の経緯や、信仰深く賢明な少女としての成長物語、結婚や受胎、出産の顛末が詳しく語られます。こうした物語は正典以上に人々に親しまれ、特に文化・芸術の重要な題材となりました。

ところで、一口にキリスト教と言っても、様々な宗派があります。一般にルネサンスやバロックなどの華麗な宗教絵画のベースとなっているのは、カトリックの教理です。イコンを中心とした正教会(東方教会)は、西方のカトリック教会とはかなり異なる図像の伝統を持っています。また、聖書(正典)に重きを置くプロテスタントは、総じて美術には淡泊です。(プロテスタント圏では宗教画の需要は減っていき、代わって風景画や静物画などの世俗絵画が発展します。)

処女にして母という、女性に求められる理想の両極を具現し、聖女の頂点を占め続けてきた聖母マリア。その純潔性をめぐっては宗教者の間でも見解が分かれるようですが、これほどまでに敬愛され続けてきたのは、純潔性よりもやはり母性のゆえではなかろうかと思います。実はマリアとイエスの母子関係は、実際にはそれほど親密で良好なものではなかったようです。しかし、少なくとも絵の中では、美しく純潔な若い母と無垢な幼子は、男性にとっても女性にとっても「理想のお母さん」として救いと安らぎの象徴となってきたのではないでしょうか。

さて、聖母と並んでもう一人、美術界を牽引する重要な女性が「マグダラのマリア」。第2講では、この清濁併せのむもう一人のマリアを取り上げました。内容はコチラ

★7/11 絵の中の女性 #3「ファム・ファタルの系譜」受講者募集中!詳しくは下記をごらんください。
案内チラシ
http://lifeskill-npo.org/pdf/art-tabi-4th_2016_zenki.pdf
申込フォーム
http://my.formman.com/form/pc/BNHlAlQTb43d3jxo/
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