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ポンパドゥール夫人とパステル [アートな話題]

皆さん、この絵をご存知でしょうか[exclamation&question]

pompadour.jpg

18世紀フランスの画家モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥール(Maurice Quentin de La Tour, 1704-1788)の描いた、有名な<ポンパドゥール侯爵夫人の肖像>です。

ポンパドゥール夫人といえば、知性と美貌を兼ね備え、平民出身ながら(といっても裕福なブルジョワジーではありますが)国王ルイ15世の寵愛を受け、一世を風靡した才女。サロンの中心として、ファッション・リーダーとして、また影で政治を動かすフィクサー(!)として(歴史は夜つくられる…)、時代を牽引した、才媛中の才媛でした。前髪を高~く盛り上げた、あの髪型にも、その名をとどめていますね。

しかし、ここで注目したいのは、夫人その人よりも、画材。この絵、何で描かれているかわかりますか?

答えは、ズバリ、

パステル

です。

昨日の街かどアートすぽっとでは、お母さんと子どもたちに、指でかく手軽なパステルアートを楽しんでいただきました。パステルの魅力の一端に触れていただけたことと思います。

アート・ワークショップではいろいろな画材を使いますが、その中でも特に人気の画材というのがあります。その一つがパステル。色彩豊かで透明感のあるパステルは、画材として扱いやすく、それでいて完成度の高いものに仕上がることが人気のカギでしょう。

一方で、パステルは、こんな本格的名作にも使われているのです[ひらめき]

どうです?磁器のような滑らかな肌、つややかなドレスの質感、背景の家具や書物、カーテンやクッションまで、実に丁寧に描きこまれ、その表現力と完成度は、油絵と比べてもまったく引けをとりません。サイズもパステル画としてはかなりの大作(177×130cm)。モデルの魅力をあますところなく描き出し、パステルという画材の可能性も極限まで引き出しているといえるのではないでしょうか。

モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥールは、パステル画の名手でした。当時は、宮廷文化華やかなりし時代。爛熟期の貴族社会で、明るく、軽妙洒脱で、享楽的な気分に満ちたロココ美術は、王侯貴族にたいへん愛されました。軽快で柔らかなパステルのタッチは、そんな時代によくマッチしたのでしょう。単なる下絵や素描の域を超えた名画が生み出されています。

時代は革命前夜。。。

1789年、フランス革命の勃発とともに貴族社会は終焉を迎えます。国王夫妻(ルイ16世&マリー・アントワネット)は処刑、貴族も多くが処刑され、あるいは国外逃亡し、いわゆるアンシャン・レジーム(旧体制)は崩壊しました。社会体制は変わり、美術のモードもガラリと変わります。

1788年、革命の前年にモーリス・カンタンが世を去ったことは、おそらく幸運だったでしょう。ロココの申し子だった画家の多くは、当然ながら革命後、不遇の身に転落したからです。

こうしてみると、パステルの軽やかな透明感が、どこかしらはかなげにも見えてきたり…画材一つとっても、いろいろな表情があるのですね。画材のもつ魅力を引き出し、味わうのも、アートの楽しみだと思います。

あなたのお手元のパステル、今日はどんな顔をしていますか?

[アート]ルーブル美術館<ポンパドゥール侯爵夫人の肖像>のページ(日本語)
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