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東京造形大学にて [講師出講]

7月21日、八王子市にある東京造形大学で講義をしてきました。芸術心理学を担当する、アートセラピストのS先生のお招きで、ゲストティーチャーとして話すことになったのです。芸大の雰囲気を味わうのは久しぶりでしたが、建物が点在し学生達がたむろする風景や講義室の空気は、何だか懐かしく身近なものに感じられました。

 講義タイトルは、「表現から見る子どもの心の発達とメッセージ」。2~3歳から12歳までの子どもの作品に見る内的傾向について話しました。幼児期の子どもが大人の想像以上の意志や意図をもって表現していること、また小学校時代の子どもの表現に現れる精神性・心の葛藤などを話し、さらに、私自身の34年間の子どもの絵との関わりの中で、特に深い感銘を受けた、ある3歳児の退行の事例に触れました。

 退行とは、人が発達して来た段階を逆戻りして現在よりも幼い状態を表すものです。私が出会ったある少女の絵は、人間の幼少期における愛情の獲得の重要さと、そのことが人の発達段階における精神エネルギーにかかわることを私に教えてくれたのでした。

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 講義の後、学生二人とS先生、私の4人でお茶会をもちました。参加してくれた学生たちは親和的で、「現場の人の話に迫力を感じた」と、講義の感想を述べてくれました。年齢差はあるけれども、私たちは大いに語り合い、東京で過ごした学生時代の寮仲間との語らいを思い起こしつつ、学生たちの現在・未来・仕事、また私自身の過去の生き方などを共有しました。

 そこから不意に、一人の学生が、自分の子ども時代に起こった退行の記憶を話し始めたのですが、大変興味深い内容だったので、紹介しておきたいと思います。

 「退行についての話を聞いて、幼稚園のころに世界のすべてが恐くて、何をするのにも恐怖を感じていたことを思い出しました。下に弟が二人いるのですが、それが関係あったのでしょうか。押し入れに隠れるのが大好きで、私の夢はウミガメもになることでした。私は内陸部の生まれで、海もウミガメもよく知らないはずなのに、何故か、「ウミガメ」になることをよく想像しました。今日の講義を聴いて、私の感じていた恐ろしさ、そして、その不安を癒すカメの存在などが、全くテキスト通りじゃないの!と思ってしまいました。」

 人と出合い、新しい事実と出合い、さらに心の不思議に出合う一日でした。多くの学生の皆さん、ありがとうございました。

理事長 小村チエ子

写真:キャンパスでみかけた学生の”らくがき”
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